全国外食産業・業務用卸特集

卸・商社 2021.08.14
全国外食産業・業務用卸特集

 2021年の緊急事態宣言下の業務用卸の売上げは、平均で19年比3割減推移の見込み。給食は1割減で、外食は5割減、それをならして3割減という状況だ。当然、卸各社で給食、外食、中食と得意先業態の比率は異なるし、エリアによってもアルコール提供中止などの規制がないなど状況は異なる。
 給食は20年のような学校一斉休校による学校給食の中止はないものの、事業所給食はテレワークの定着により社員食堂、仕出し弁当給食の食数の大幅減、またそもそも社員食堂自体が閉鎖というような事態も起きている。安定しているのは高齢者施設、保育園給食ぐらいだ。
 外食は法人需要が消失している上に、時短営業。それに加えアルコール類の提供中止、そして採算が合わないから休業と店舗はもちろん業務用卸にとって売上げが立ちにくい状況だ。これも業態やエリアで異なるがビジネス、観光といった外食動機と直結する人の移動が激減している状況では需要は冷え込んだままだ。それと首都圏では飲食店軒数が1~2割減っているという。好立地の空き物件も増えている。
 ワクチン接種が進めば、秋口からはある程度の回復もしくは復活を期待する声が強い。だが、期待通りに進むかどうかはあくまでも不透明だ。期待することも大切だが、重要なのは備えることだ。卸各社は固定費削減による生産性の向上などで損益分岐点の引き下げに注力している。また、商品戦略的にはコメ、鶏卵はもちろん野菜、畜肉、日配品とフルライン化を推進している。
 効率化を推進し、損益分岐点を下げることで経営の筋肉体質化、フルライン化によるインストアシェアアップを図ることなどが狙いだ。もちろん経費をかけずに今をしのいで動ける状況になった時に、思いっきりアクセルを踏むのも戦略の一つだ。コロナ禍での備えが、回復期での原動力になることは間違いない。
 また、今後は予想よりも進んでいない同業他社や異業種との業務提携やM&Aが増えるだろう。外食産業は、コロナ収束後の2、3年で業態や勢力図が大きく変化するだろう。ボリューム的に元に戻ることはあっても、同じ形で戻ることはない。
 また、需要が落ち込んでいる中にあって世界的な原料価格の高騰が、どのような影響を及ぼすのかも不透明だ。
 しかし、コロナ禍であっても外食産業のラストワンマイルを担い続けてきた。その社会的使命は変わることはない。その使命を守り続けるためにどのような変化もしくは機能が必要となるのか、そしてそれに対応できるかが大きな課題だ。(金原基道)

 ※本特集は、4回目の緊急事態宣言前に取材した内容もあり、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で取材時と状況が異なっている場合もある。