全国卸流通特集

全国卸流通特集:菓子卸 三菱食品が2018年度売上高3000億円台

卸・商社 2019.09.28 11949号 15面
菓子卸のあるべき姿を具現化した山星屋展示会

菓子卸のあるべき姿を具現化した山星屋展示会

2018年度菓子卸上位4社の売上高は、三菱食品菓子事業が3052億7700万円で初の3000億円台に乗せた。2位の山星屋は2644億6700万円、3位のコンフェクスグループは2507億2600万円、4位の高山は2076億6000万円で4社全て増収を達成した。一方、利益はコンフェックスを除き減益となった。三菱食品が菓子事業で売上高3000億円を達成したことで今後、3000億円規模の売上高を持つことが、菓子卸業における主要プレーヤーになる条件の一つになったと見られる。(青柳英明)

●主要プレーヤーの条件に 中小は独自路線模索

全国菓子卸商業組合連合会によると、菓子流通卸業界は企業数が約40年前に全国で1800社、20年前に約800社、現在が40年前の14%に当たる250社に激減しているという。中小企業を中心とする淘汰(とうた)は、メーカーも菓子流通卸企業も同じで、M&A、廃業、倒産など、厳しい状況に置かれている。同連合会の二木正人理事長は、こうした現状に、「菓子は粗利益率が低いので、数量によるマスメリットを追求し、グロスでの利益高を求めることから、パワーとしての資本力競争が顕著になっている。これがメーカー、流通卸、小売に至るまで、M&Aや資本提携などで業界再編の勢力競争として寡占化の方向へ向かっている」と指摘した上で、「構造的に安売り体質が収まらないと業界全体の利益配分も不可能であり、パワー競争による結果で、中小零細企業の減少は続くことが予想される」と分析し、「中小零細企業が特徴ある独自路線の開発や協業の道を模索する」ことの必要性を指摘する。

小売業界が、業態の壁を越え再編が進む中、それに伴う形で見積もり合わせが増加する。さらに、19年10月に控えた消費増税がこの動きを加速させる。SMは、既存店売上げが伸び悩む中、最低賃金の上昇による人件費の高騰や人手不足を起因とする物流費の高騰などで収益が厳しさを増すことが予想されることから、ある種、防衛的な動きとして見積もり合わせを行い、納品価格の引き下げを期待する。一方、菓子卸としても物流費の上昇は同じであり、納品価格の引き下げに応じることは難しい状況だ。

一方、見積もり合わせの増加は、二つの側面で菓子卸にとってチャンスであるとも言える。一つは、得意先の採算性を精査し、「帳合い返上」することによる収益基盤強化の効果だ。極端な言い方をすれば、見積もり合わせを利用して不採算取引を波風立てずに切ることが可能になる。さらに「利益」を考慮しなければ、シェアを拡大する絶好の機会でもある。しかし、現在の状況で急速な規模拡大は、利益の悪化に直結する可能性が高いことから難しい選択が迫られる。

菓子卸の菓子メーカーから商品を仕入れて、小売業に販売するというビジネスモデルが、人手不足を起因とする物流費の高騰や小売業の業態を越えた競争による、納品価格引き下げ要請などで厳しさを増している。こうした中、菓子卸各社は収益基盤と競合との差別化のため、オリジナル商品開発を強化している。

山星屋は、8月末で明治との製造販売契約が終了した「マクビティ」の日本国内販売代理店契約を獲得。子会社で商品企画開発を行うモントワールで、11月から販売を開始する。アイテムは、マクビティブランドの中で世界的にも人気高く、日本では発売していなかった4アイテムを展開する。同社は、オリジナル商品販売で輸入代理店事業を成長戦略に掲げており、「ラ・メール・プラール」ブランド、「トップス」ミニオンシリーズなどが好調に推移している。

コンフェックスは、「お菓子はファッション」との考えから、流通菓子の枠に捉われず食、スイーツ、ファッション、ライフスタイルなど幅広く、積極的にトレンドへの取り組みを行う。

こうした取り組みの中から、ファッションブランド「ANAP」とコラボレーションした100円均一商品が誕生した。「鈴カステラ」「タマゴボーロ」「芋ケンピ」など、歴史のある菓子のパッケージの意匠を変えることで、現代を生きる商品として生まれ変わらせることに成功。卸PBの中心的な役割を担ってきた、100円均一商品の「リ・ブレンディング」に注目が集まる。

こうした、差別化されたオリジナル商品開発にリテールサポートなどを組み合わせ、常にそのレベルを磨き続けることで、小売業の売上げ拡大、課題解決に貢献することが菓子卸に求められる。

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