コメビジネス最前線特集

◆コメビジネス最前線特集:不作から一転豊作へ

将来のサッカー界を担うガンバ大阪ユース選手が食農体験で田植え

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中国人観光客にコメ土産を訴求(新潟ふるさと村)

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4年連続の高値と、2年連続の不作に見舞われた昨年の米穀業界。今秋は豊作が見込まれ、減り続ける消費量や難航する調達難に一息付ける年となりそうだ。だが安堵はできない。少子高齢化や小家族化、有職主婦の増加などによる家庭炊飯減少による消費減に、コメの高値から提供するご飯の量を減らす外食や中食業者の自己防衛が重なり、コメ消費減に拍車が掛かっている。この傾向は今後、ますます強まることは間違いない。(佐藤路登世)

米穀業界では、新たな事業領域参入が加速化している。筆頭が最大手の神明ホールディングス(HD)で、コメを主軸に川上の農業から川下の外食・中食まで手掛ける中で、将来的なコメ生産を守ろうと、eラーニングによるアグリビジネススクール開校や、スマート農業の支援を積極化。川下分野では、米飯が強みの持ち帰り惣菜専門店を近々、オープンする計画だという。

在阪有力コメ卸の幸福米穀も、30億円を投じて建設した最新鋭精米工場に、玄米グラノーラや玄米パンなど加工品の製造設備を併設。このほか、玄米ペーストを練り込み新開発した食パンの専門店「いなせ」を自ら展開するなど、原材料としてのコメに活路を見いだす。幸南食糧も、拡大するパックご飯市場を取り込もうと、もち麦を切り口とした商品を自ら開発・製造し販売している。

もち麦需要の高まりも背景にある。健康志向の高まりに支えられ、精麦や雑穀、加工玄米など、健康を切り口としたコメ関連商品市場(POSデータからはくばく推計)は前期、前年比8.8%増の138億6200万円に達した。中でも、もち麦中心に精麦類は、同12.8%も伸張した。

加えて玄米も人気で、炊きやすさや食べやすさが売りの加工玄米の市場規模は、10億円弱とまだ小さいものの、昨年は同41.2%の大幅の伸びを示し、日本人のコメ消費形態の変化がうかがえる。

また、頻発する自然災害や異常気象に対応した、アルファー米やレトルトによる災害用非常食も多様に発売されている。

特に、災害時の要配慮者への食事に関心が集まる中、アレルギー対応商品が存在感を増し、コメへの関心が高まっている。

これは米粉も同様で、グルテンを含まない日本産米粉が、東京2020をビジネスチャンスとするべく、業界は入念な仕掛けが必須となっている。

産地にも新たな動きが出てきた。全農各県本部では、集荷率向上を旗印に掲げ、従来JAグループへの出荷が少なかった大規模農事組合法人中心に巡回をスタート。実需者と結びついた直接販売や複数年契約など多様な契約手法を提示するほか、従来の共同計算方式による委託販売に買い取り方式も併せ、メリットが出せる多様なメニューの提案に全力を挙げる。さらに、実需と直結した多収穫米の生産誘導を図るなど、変化する時代への対応を急ぐ。

そこで始まる19年産新米商戦。従来、消費の多くを支えてきた北海道や新潟県産米の出回りが少なかった昨年から一転、今年はマーケットに戻ってくる。日本人の小さくなった胃袋は、不足感なくそれを受け入れただけに、今米穀年度は、産地・流通ともに、手腕が試される年だ。現に各産地とも、業務用・家庭用を含め、新たなコメがひしめきあっている。

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