海外日本食 成功の分水嶺(90)アライドコーポレーション〈下〉

卸・商社 連載 2019.12.16 11985号 03面
農産物輸出の事業化に先立ち、氏家勇祐社長が出展したタイの展示会=提供写真

農産物輸出の事業化に先立ち、氏家勇祐社長が出展したタイの展示会=提供写真

●足で稼いだ仕入れルート

果物を中心とした日本産の果物を、タイほか海外に輸出する事業に取り組んでいる横浜市の食品輸出入商社「アライドコーポレーション」。事業開始後に氏家勇祐社長が真っ先に直面した課題が、安価で継続的な供給を行っていくための、必要で安定的な仕入れルートの確保だった。

消費者個人がスーパーなどで買い物をするのとは大きく異なり、トン単位、恒常的・長期的に仕入れを行っていくのが輸出事業。氏家社長がまず動いたのが、卸売青果市場での「買参権」の確保だった。

卸売市場には、農林水産大臣が認可する中央卸売市場と都道府県知事が許可する地方卸売市場があるが、いずれも必要とされるのが買参権。これを有していなければ、原則として商品購入はできないというのが市場のルールだった。

そこで氏家社長が足しげく通ったのが、東京都が管理し日本最大規模を誇る公設卸売市場の大田市場。ここで趣旨に賛同する“仲間”を見つけ、とうとう得たのが買参権だった。「世界に向け青果物輸出を手掛ける大手企業と、ようやく同じスタートラインに立てた」と同社長。日本産青果物の輸出を手掛けようと決意して約1年後のことだった。

日本各地の生産農家へも頻繁に足を運んだ。日本有数の農業県がひしめく東北地方や北関東、遠く九州へも自ら出掛けていった。自治体の農政担当職員や農業組合の幹部らを前に、日本産青果物の輸出の可能性と将来展望を熱く語った。

海外輸出を始めれば競争原理が働き、一時的には商品の相場が下がることはあり得る。だが、それでも海外には貪欲な消費があり、中長期的に見れば日本産青果物の市場は維持されていく。将来的な人口減が続く日本市場だけに頼っていては、これからの展望は開けない、と。

こうした説得が次第に広がりを持ち、賛同者を増やしていくことにつながっていった。今では、全国の多くの農家や農政担当者たちが同社の取組みに賛意を示し、協力をしている。

日本第2位の農業生産額を誇る茨城県もそうした一例だ。同県は、人口290万人のうち農業従事者が11万人もいるという日本屈指の農業県。ここでも氏家社長は、海外輸出の重要性と産品ごとの可能性を粘り強く提案している。タイにとどまらず、受け入れてくれそうなシンガポールやマレーシアなど周辺の東南アジア諸国も、もちろんターゲットだ。

一方、タイほか受け入れ先の国々では、食の安全に対する意識の向上などから輸入規制を厳しくする動きも広がっている。産地の表示義務付けやリパックの規制などだ。こうした認証の対応についても、タイに現地法人「バンコク・フード・システム」を持つアライドコーポレーションの優位性は固い。

「いつの日にか、タイの道ばたにある屋台で日本産の柿が普通に売っている時代が来るかもしれない。そのためにも次のステージに進まなければならない」と氏家社長。その目には確かな決意がみなぎっていた。

(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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