海外日本食 成功の分水嶺

海外日本食 成功の分水嶺(75)「豚骨火山らーめん」<上> パフォーマンスで客つかむ

外食 2019.05.13 11875号 03面
「豚骨火山らーめん」1号店と責任者の山本智史さん=タイ・バンコクで小堀晋一が4月19日写す

「豚骨火山らーめん」1号店と責任者の山本智史さん=タイ・バンコクで小堀晋一が4月19日写す

火山に見立てた真っ赤な食器の中でラーメンが白い湯気を立て沸騰する、そんな一風変わった日系のラーメン店がタイの首都バンコクで人気を集めている。日本でもあまり見慣れない光景に、新しもの好きのタイ人客が食べるのも忘れ、スマートフォン(多機能携帯電話)片手に撮影に興じている。テーブルごとに起こる一時の興奮。「豚骨火山らーめん」は今、現地の人気店の一つにまで成長を遂げた。

同店舗を運営するのは、大阪など関西を拠点にラーメン店やハンバーグレストランを展開するサンパーク(大阪府吹田市)のタイ法人「サンパークバンコク」。13年6月にタイ1号店を出店。以降、いずれもバンコク首都圏に直営3店、フランチャイズ(FC)3店の計6店を展開するまでとなった。今後も出店を続けていく方針だ。

大阪を発祥とする同社。海外展開より以前に、東京など関東進出を検討したことがあった。だが、11年3月の東日本大震災で計画は一時中断。その先と予定していた海外市場を急きょ、前倒しで開拓することになった。そのうちのメンバーの一人が、現タイ法人の責任者を務める山本智史(39)さんだ。

政府が進めるクールジャパン戦略のイベントで、豚骨火山らーめんのロゴシャツを着てプレゼン・ステージに立った山本さん。その後の名刺交換の場で、さまざまな業界の人々と出会った。熱い思い、やりがい、未知への挑戦。「それまで海外なんて考えたことさえなかった。あの場が自分自身が海を渡るきっかけとなった」と振り返る。

シンガポールに続く海外2拠点目となったタイに降り立ったのはオープン予定3ヵ月前のこと。顔見知りが一人もいない中での開店準備には、何度も不安がよぎった。予定通り進まない内装工事、離職率が高いとされるスタッフの雇用、そして食材の現地調達–。市場めぐりを重ねる一方で、バンコクにある大半のラーメン店を片っ端から訪ね歩いた。わずかでもヒントを得たいという、わらをもつかむ思いだった。

ただ、シンガポール店での実績からパフォーマンスでは負けないという自負も一面ではあった。石の器を使ってもうもうと湯気を立ち上げる様は、まさに火山そっくり。「熱々の鍋のようなラーメン」という新しいコンセプトが、タイの市場で受け入れられないはずがない。そう信じていた。

確信の裏側には、妥協しない食材づくりがあった。スープ、具材などは全て手作り。時間をかけて丁寧に作ることがパフォーマンスを根底から支えると考えていた。どちらかが欠けても成功はない表と裏の関係だった。

とはいえ開店直後は知名度もまだ低く、昼の時間帯が1回転で終わることも。このためスタッフと駅前に繰り出し、ビラ配りや声がけにも励んだ。警備員から退去を求められることもしばしばだったが、決して諦めなかった。こうして半年が過ぎたころ、自然と客足が向くようになった。単月黒字化が達成できたのは、それからしばらくのことだった。(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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